一流の職人を育てる環境づくりを
社内の職人を上手に育成するため、そのひとつの方法としてヤマナカシャツには独立制度があると、前回紹介しました。
そもそも職人達は出来高制でシャツ作りを進めています。独立制と出来高制、決定的に違うのは職場をどこに置くかということです。独立を認められた職人にはミシンやアイロン台、小物などの特殊機械を会社負担で自宅へ支給し、自由に仕事を進めることができます。会社の機械を使わないとできない作業などもありますから、必要があれば会社で仕事もできます。つまり家庭の事情に合わせながらも、よいシャツを作り出すことできるのです。
この制度がスタートしたのは3年ほど前。背景には、職場環境が少なからずシャツ作りに影響をもたらしていたことにありました。これも前回お話しましたが、同性同士の職場は独特な雰囲気があるもの。モノづくりをするうえでコミュニケーションが大切なのは承知していますが、その雰囲気がストレスで有能な職人の作業の妨げになるのなら、あえて個別に環境を作り上げてしまおうということになったのです。
ただ制度を適用するには十分なスキルはもちろん、職人との信頼関係も大切です。大きなミシンを家の中に導入するには、ご家族の理解もなくてはなりません。そのため誰にでも適用できるわけではなく、その職人にとってよいシャツ作りをしてもらうための、特例的かつ必要な制度なのです。
工房から独立するまでには、それ以前に社内で様々な役割をこなす必要があります。もちろん事務作業などもありますが、一方で優秀な職人にはやりたいことをどんどんやってスキルアップしてもらいたい…とも思います。この矛盾が悩ましいところですね。
次回は職人育成において、ヤマナカシャツにおける新たな取り組みをご紹介します。