vol.20 | 芯地について(フラシ芯の一種、水溶性仮接着芯)
フラシ芯の一種で、 一時的に接着芯となる仮接着芯という芯地があります。
製造がしやすく、 シャツの仕上がりが良いので、現在のドレスシャツなどで、 よく使われている主流の芯地です。
ただ、この仮接着という芯地ほど、理解がされにくい芯地はありません。
そこで、深く掘り下げてご説明したいと思います。
ただ、この仮接着という芯地ほど、理解がされにくい芯地はありません。
そこで、深く掘り下げてご説明したいと思います。
シャツの製造は、布をミシンなどで、縫製することで出来ていきます。
この縫製という作業、シャツに限らず、 2枚の布を縫い合わせるのが普通で、それ以上の枚数、 3枚以上を一度に縫うことは極めて困難な作業になります。 理由は手が2本で、3枚以上は抑えきれないからです。
縫製は、「二枚の布を縫い合わせる」が基本です。
縫製は、「二枚の布を縫い合わせる」が基本です。
しかし、フラシの芯地は、言ってしまえばただの布のため、襟など芯地が入る箇所は、仮止めをしない限り、3枚を縫わなければならなくなります。つまり、ほぼ上手く縫えないのです。
この話をしますと、「昔の方の技術なら、それが出来た、今は技術が無いから出来ないのだ」、と言われる方がいます。
そこで、昔(昭和から平成の初期まで)の職人がどのようにしてフラシの芯地を縫っていたのかを、説明する必要があります。
昔のシャツ職人は、フラシの芯地しか知らず、フラシの芯地が全てですので、相当に苦労されたと思います。
そのままでは縫えないので、縫製糊(ほうせいのり)という水に溶ける接着ノリを使い、フラシの芯を所々糊付けして、 貼り合わせてから縫い上げました。所々糊付けしたのは、べたっと貼ってしまうと、風合いが落ちるからです。
そのままでは縫えないので、縫製糊(ほうせいのり)という水に溶ける接着ノリを使い、フラシの芯を所々糊付けして、
当時、シャツ職人は朝起きると、まず天然の糊を竃で炊き上げ、 アイロンを使ってフラシの芯に糊付けして襟カフスに貼ったものでした。
ただし、糊は、その後、臭いや糊跡がシャツに残り、さらには糊付けした一部だけ硬さが出ることが問題になり、廃れていきます。
同時に、フラシの芯地も職人も衰退していきました。
同時に、フラシの芯地も職人も衰退していきました。
縫製糊に変わるものとして、登場したのが水溶性の仮接着芯です。
糊を芯地全体に均等に満遍なく添附することで、 フラシ芯の弱点を克服し、一気に普及しました。
この水溶性仮接着芯は、製造時に、 接着芯と同じように布にペタッと貼られ、 非常に縫いやすくなります。縫いやすいので、 シャツの品質も向上しました。
同時に、縫製糊を使わなくても縫えるので、職人の若返りにもつながりました。
同時に、縫製糊を使わなくても縫えるので、職人の若返りにもつながりました。
ただ、この非常に便利で性能の高い水溶性仮接着芯、重大な弱点が あります。
フラシの状態になるのは、一度水洗いやお洗濯をした後で、 シャツを購入直後は、糊が天然か化学物質かという違いを除けば、接着芯と変わらないという事です。
購入後すぐは糊が抜けてないので、 襟などが硬く、注文と違うとお客様が戸惑うことも大変な問題です。
さらには今度はお洗濯によって、フラシの状態になった時に、 その変化にお客様が戸惑うという事もあります。
仮接着芯は、便利で高性能な反面、 そんな難しい部分も持ち合わせています。
ただ一つ、結論として言えるのは、一度洗えば、最高の芯地、 それが水溶性仮接着芯です。
この水溶性仮接着芯は、 フラシの芯よりも値段が高く、便利で、 現在のシャツ工場ではほとんど、この芯地か、 接着芯を使ってます。