優しすぎない人づくり
ヤマナカシャツでは、優れた腕をもつ職人が効率的に仕事のできるように独立制度があります。シャツ作りの機材を自宅に導入し、モノづくりのペースを自分で見出し、結果的によいシャツを作り上げる。これは作業に集中するうえで、この上ない成果を上げることができました。
ただ独立というスタンスで職人がスキルを上げる一方で、経営者としての自分もレベルアップしなくてはいけません。つまり「よき職人≠よき経営者」の負の構図はよく見られることで、独立制度に則った職人がよき経営者目線をもてるとは限りませんし、自分自身も経営に目線が行きすぎるとシャツ作りに集中する時間は減ります。このバランスをうまくとっていくことで、「こだわり=利益」も徐々に実現されてきます。
独立制度は一流の職人に対してのみ適用してるので、分かりやすい仕組みです。一方、課題なのはまだそのレベルに至っていない職人に対する教育方法。従来はその人に合った仕事をこなしてもらうため、社内の様々な業務のなかから仕事の進め方を模索し、縫い仕事以外の事務や接客の割合・関わり方を加えていました。押しつけではなく個人に合った方法として進めていましたが、一人ひとりで業務の進め方・役割分担が違うと、それはそれで経営者の思惑とはうらはらに、社内トラブルのもとになることも見受けられました。
あくまで結果論ですが、ある程度は厳しく均一に業務をさせていった方が職人のスキル上達の近道だったかもしれません。こうした状況を人に話すと、「山中さん、優しすぎですよ」と言われてしまうことも…。
そこで今年からは、新たに入る職人に対して試用期間を設け、その後、実際にヤマナカシャツで業務を続けられるか技術の見極めのテストを行いたいと思っています。もちろん不合格であれば、会社を辞していただくしかありません。しかしこうして職場でよい緊張感をもってもらい、作るだけでなく会社で働くことをトータルで意識し、プライドをもってもらえればと思います。
センスと心を磨いて、はじめてお客様に喜ばれるモノづくりが実現できるのです。