20.「CADと手書き」の融合 — 現代におけるシャツ設計とは

シャツの基礎

シャツを仕立てる際、まず必要になるのが「設計図」です。
アパレル業界ではこれを「パターン」や「型紙」と呼びます。建築業界の精密な図面と比較すると、アパレルのパターン作りは、実は驚くほど感覚的で曖昧な側面を持っています。
既製品の型紙を転用してアレンジを楽しむのも服作りの醍醐味ではありますが、「設計図」という言葉の本来の意味からすると、少し「いい加減」に扱われてきた歴史があるのも事実です。

現在、シャツの型紙作りは大きく分けて3つの手法が存在します。

  1. デジタル完結型(CAM):データを作成し、そのまま機械で自動裁断する手法。
  2. デジタル出力型(CAD):コンピューターで設計し、紙に書き出した型紙。
  3. 完全手書き型:一から手作業で書き起こす型紙。

「職人の手書きこそが至高」と考えるシャツ好きの方も多いでしょう。
しかし、そこには意外な落とし穴があります。
例えば、あなたが住むビルを建てる際、もし「設計図はすべて手書きです」と言われたら、どう感じるでしょうか。
手書きには特有の「味」がありますが、論理的な正確さではコンピューターに一歩譲ります。
自由度が高すぎるがゆえに、時に解剖学的な正解から逸脱し、人体にフィットしないものが生まれてしまうリスクも孕んでいるのです。
また、非常にコストが掛かります。同じ事を手で繰り返さなければならず、その無駄なコストはすべて上代に上乗せされてしまいます。

一方、デジタルのみ(CAM)の手法は効率的で安価ですが、仕様や性能には限界があります。

では、結果として何が最良なのでしょうか。 私がたどり着いた結論は、「CADの精密さ」と「手書きの修正能力」を掛け合わせたハイブリッドな手法です。

大まかな骨組みはCADを用いて理論的に、かつ正確に設計する。
そこから紙に書き出し、人間の手でミリ単位の微調整(アナログな修正)を加える。
この方法が、すべて手作業で行うよりも正確であり、かつ品質とコストのバランスが最も優れています。

もちろん、紙の型紙を保管するコストや手間はかかりますが、それこそが「本物」を追求するための代償です。
一見、手書きの方が情緒的に優れているように見えますが、論理に基づいたデジタル設計にそれだけでは表現しづらい曲線などを、人の手で加える。
これこそが、現代のシャツ作りにおける現状の「最良の答え」だと確信しています。

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