白地にブルーとグレーが引かれた、タッタソールチェック。Yさんに提案させていただいた生地です。シャツを作るうえで、自分だけの1枚をつくるためのゴールは一つ。でもそこに至る選択肢は無限大と、以前に述べました。無限の中の1枚と思うと果てしない作業ですが、意外と答えは早く見つかります。Yさんの場合、普段はスーツを着ないお仕事とのことでした。そのため今回のシャツは、カジュアルシーンにも着こなせるもので意見が一致しました。爽やかなイメージをもつYさんですが、ジーンズなどとの組み合わせでもよく似合うようなスタイルやカラーが、自然と提案ポイントになってきます。またお話を聞くと、いつも腕時計をされているとのこと。カフスの大きさは嵌めている腕時計に合わせながら、その分の長さを調整しました。さらにYさんご自身の好みをヒアリングして、襟の形、カフスの形、胸ポケットの形からボタンのタイプなどを決めます。しかし慣れていなければ、そこではっきりした意見をいえる方はそういないです。活動的なYさんも、なかなかこれだといえなかったようですが、形や色など、生地やボタンなどの長所や特性などをできるだけ丁寧に説明していくと、段々とご自身の中で意見が固まっていったようでした。このように決して押しつけず、ニーズを引き出していくのも技術です。あくまで最終的にはお客様ご自身が「自分で決めた」ものをプロの職人に最高の形でつくってもらったと思っていただくことが大切なのです。オーダーの魅力はシャツに対する安心感と、そこから生まれるブランド意識です。そして「価値を高めていくこと」。これがヤマナカシャツ今年後半の目標です。