父との確執は、父が亡くなるまで続きました。
しかし、この歳になって気づいたことがあります。シャツづくりに賭けられる集中力も、物事の本質を掴む力も、思い返せば父譲りのものでした。新聞のほとんどを記憶してしまうような人でしたから。環境としては厳しい状態で引き継いだ事業でしたが、能力は父からの贈り物であり、今の私を支えてくれる貴重なご縁のほとんども、辿れば父から繋がったものでした。
性格もやり方も正反対。それすらも、父が反面教師になってくれたのかもしれません。亡くなって10年以上が経ち、父が残してくれたものは目には見えないものばかりだったと気づきました。今はもう、和解できた気がしています。
現在のヤマナカシャツは、千葉・市川のアトリエで、採寸から仕上げまで職人が一貫して行う工房直売のフルオーダーシャツ専門メーカーです。一日に作るのは10〜15枚。約2,000種類の生地から、一枚一枚に目を行き届かせて仕立てています。
そして挑戦は続いています。シャツの製造工程で実用新案権を取得し、世界初の試みとなる「人体立体裁断」の技術で特許を出願しました。下請けから始まった町工場が、いまは世界で唯一の技術を目指しています。
目標は、「100年後もシャツを」。100年後も続くカミーチャ(シャツ屋)であることです。
すべての方に、その方のためのシャツを。創業から60年、ヤマナカシャツの物語は、まだ続きます。
